傷病手当金は病気で会社を欠勤せざるを得なくなり、会社から給料をもらえない場合にその従業員の生活を保障するための制度です。同じように生活を保障するための制度として年金がありますが、傷病手当金は状況により年金との調整が発生することがあります。
ここでは傷病手当金と年金に焦点を当てて、調整が発生する場合について確認していきたいと思います。
なお以前に書いたこちらのページも参考にしていただきたいと思います。
《参考》
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傷病手当金の「調整」とは?

傷病手当金の「調整」とは、他の制度により給付を受けられることにより傷病手当金の支給額を減らすことをいいます。
支給額を減らすことにより他の制度との均衡を図ったり、病気で欠勤することにより給付されるお金が多くなりすぎないようにします。それが傷病手当金の調整の意味です。

在職中・退職後に共通の調整の対象

  • 障害厚生年金
  • 障害手当金
  • 障害厚生年金と傷病手当金の調整について

    障害厚生年金と傷病手当金については、支給の原因になった病気が同一の場合に限り調整されることになります。同一の病気により発生する生活保障が二重で受けられる事になると、不公平が生じるからです。

    また障害厚生年金と同一の病気により発生している障害基礎年金があれば、その障害基礎年金の金額も合算し傷病手当金と調整されることになります。

    障害手当金と傷病手当金の調整について

    障害手当金と傷病手当金についても調整されます。障害手当金は障害厚生年金の制度の一部ですから、障害厚生年金について調整がかかるのであれば障害手当金についても当然調整の対象になります。

    障害手当金の調整額について

    障害手当金は障害厚生年金のように年額で支給されるものではなく、「一時金」として支給されるものになります。障害厚生年金の2年分に相当する金額が一時金でもらえるので、支給額としては大きな金額になりますが、その後年金のように定期的に支給されることはありません。
    傷病手当金との調整は、傷病手当金の支給額が障害手当金の支給額を上回るまで傷病手当金が不支給になるよう行われます。障害手当金の金額分だけ傷病手当金の支給額が調整される仕組みになっています。

    退職後の期間についてのみ調整の対象になる年金

    老齢厚生年金

    老齢・退職を支給事由とする年金については様々な年金があるため「老齢厚生年金」としました。
    老齢・退職を支給事由とする年金については支給される理由が生活の保障のためであり、生活保障の意味合いのある傷病手当金とは二重に受け取ることはできません。

    なぜ在職中には傷病手当金との調整がかからないのか?在職中には在職老齢年金という制度があり、在職中の給料が一定額を超える場合には、年金の支給が停止する仕組みになっています。そのため在職中の傷病手当金について老齢年金と調整をしてしまうと、在職老齢年金で調整がかかり、さらに傷病手当金の受給でさらに調整がかかってしまうことになり、二重調整になってしまうことから在職中には傷病手当金の支給額との調整がかからないことになっています。

    老齢厚生年金等との調整について

    具体的に調整対象になる老齢年金を見ていきましょう。

    1. 国民年金の老齢基礎年金・旧令共済組合員期間を合算することにより受給資格期間を満たす人の老齢年金
    2. 厚生年金保険の老齢厚生年金・特例老齢年金
    3. 共済組合の退職共済年金
    4. 旧厚生年金保険・船員保険の老齢年金・通算老齢年金・特例老齢年金
    5. 旧国民年金の老齢年金・通算老齢年金
    6. 旧共済組合の退職年金・減額退職年金・通算退職年金
    7. 旧厚生年金保険の指定共済組合員の退職給付
    8. 旧令共済年金の退職給付

    障害厚生年金の場合と違い、老齢に関しては厚生年金に限らず調整の対象になることに注意が必要です。

    老齢厚生年金等との調整による傷病手当金の支給について

    退職後に傷病手当金の支給を受けられる場合で老齢厚生年金等の支給を受けられる場合には、傷病手当金の取り扱いは次のようになります。

    例1:傷病手当金の支給日額>老齢厚生年金等の日額

    傷病手当金の支給日額>老齢厚生年金等の日額

    傷病手当金の支給額は老齢厚生年金等との差額分の金額になります。

    例2:傷病手当金の支給日額<老齢厚生年金等の日額

    傷病手当金の支給日額<老齢厚生年金等の日額

    老齢厚生年金等の金額の方が傷病手当金の支給日額よりも高い場合には、傷病手当金は支給されません。

    注意図ではわかりやすいように退職後にすぐに在職老齢年金の支給停止が解除されているように書きましたが、実際には退職後も1か月在職中の老齢厚生年金が引き続きます。年金の話なのでここでは細かい説明は省略します。
    まとめ傷病手当金は退職後の期間についても条件を満たすことによって、受給を続けることができます。ただし、受給の条件を満たしていたとしても老齢厚生年金等を受給できるような場合には調整がかかり、場合によっては支給されないこともあります。
    受給できるものとあてにして退職し思いもよらず不支給になってしまった、ということがないように気をつけなければなりません。