傷病手当金の支給額は「標準報酬日額×2/3×支給日数」で計算しますが、その「標準報酬日額」は標準報酬月額を30で割ることで計算することができます。
ではその標準報酬月額とは一体なんでしょうか。
ここでは傷病手当金の計算の根拠になる「標準報酬月額」について説明します。
標準報酬月額とは
健康保険料はその月に実際いくら給料を払ったかによって決まるのではなく、「標準報酬月額」を1か月の給料とみなし、それに保険料率をかけることにより計算します。実際に払った給料の額をベースに保険料を計算するのは保険料を集める側も受け取る側も大変だからと考えてもいいと思います。
標準報酬月額とは1か月の賃金が大体いくらなのかを保険者が把握するために使用する目安の給料のようなものと考えるとわかりやすいと思います。
そして標準報酬月額は保険料の計算だけでなく、傷病手当金の支給額の計算についても使用されることになります。
傷病手当金の支給額の計算には標準報酬日額が登場しますが、標準報酬日額は標準報酬月額÷30で計算します。この「÷30」は1か月の日数が31日の月でも28日の月でも、常に30で割ります。
標準報酬月額の決定方法
定時決定
毎年4.5.6月に支払った従業員の賃金の平均で算定される標準報酬月額です。定時決定で決まった標準報酬月額は9月から適用され、随時改定がなければ翌年の8月まで適用されます。
随時改定
固定給に増額や減額が生じ、その増減から3か月間の平均賃金が標準報酬月額保険料額表において2等級以上増加・減少した場合に適用されます。
3か月間の出勤日数が1か月につき20日以上あることが条件です。
傷病手当金の計算について
傷病手当金の支給額を計算する場合には標準報酬月額を用います。傷病手当金の支給額は支給される日の属する月により標準報酬月額が変わることがあるので、支給日額の単価も月により変わる可能性があります。
例:支給期間が8月21日から9月20日であり、9月に定時決定で標準報酬月額が20万円から24万円に変わった場合
・8月21日~8月31日(11日間)→4,447円/日
4,447円×11日=48,917円
・9月1日~9月20日(20日間)→5,333円/日
5,333円×20日間=106,660円
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病気により欠勤が長くなった場合に標準報酬月額を下げることができるか
病気欠勤中で傷病手当金を受給している場合であっても、健康保険料は免除にはなりません。欠勤し給料の支払いがない場合についても従業員負担分については、従業員から保険料をいただく必要があります。
《参考》
傷病手当金受給中の社会保険料について
ただそこで給料が一切支払われていないのであれば、標準報酬月額が下げられるのではないかと疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。健康保険料の免除を受けられないにしても、健康保険料が下がれば病気の従業員も会社も負担が少なくなって良いのではという意見もあります。
しかしそれはできません。
標準報酬月額を変えるには「定時決定」か「随時改定」の方法をとることになりますが、定時改定については4月から6月に支払った給料の基礎になる日数(出勤日数)が17日以上ある月の平均賃金で標準報酬月額を算定します。また随時改定についても賃金の増減の生じた月から3か月間の平均賃金で計算しますが、その3か月の各月の出勤日数は20日以上なければ随時改定を行うことができません。
よって傷病手当金を受給し、欠勤が長期に及んでいる以上標準報酬月額を下げることはできないのです。